【理系必見】“理系職”に就きたいなら考えるべきこと

大学生活のゴールは「就職」だけではありません。もう一つの大きな選択肢が大学院進学です。高度な学問を深め、専門性を身につけることで、将来のキャリアの幅が大きく広がります。
この記事では、東進進学情報11月14日号の内容をもとに、以下のポイントをわかりやすく整理します。
- 大学院では何を学ぶのか
- 進学率の実態(文系・理系の違い)
- 大学院修了後の就職・キャリア
- 学費と奨学金の目安
- 女性研究者の現状
大学院には3つの種類がある
日本の大学院は大きく分けて、以下の3つの課程があります。
① 修士課程(2年)
- 深い専門知識と研究力を身につける課程
- 多くの理系の研究・開発職で「修士卒」が応募条件
- 公認心理師・臨床心理士・専修免許状など、資格取得の条件となる場合もある
② 博士課程(3年)
- 研究者として自立して研究活動を行う力を養う課程
- 大学教員や研究職を目指す人が多い
- 一方で、ポスト(常勤の研究職)が限られており、「ポスドク問題」と呼ばれる課題もある
③ 専門職学位課程
- 法科大学院(ロースクール)、MBA、教職大学院など
- 特定の専門職に必要な実務的スキル・高度な知識を身につける課程
大学院進学率は理系が圧倒的に高い
2024年3月卒業時点の大学院進学率は、全体で11.4%です。
- 理学:45.9%
- 工学:39.7%
- 農学:27.3%
- 文系(人文・社会など):おおむね3〜9%台
特に理系では、大学院進学が「当たり前」に近くなっている分野も多く、研究開発職を志望する場合は、修士進学がほぼ前提となっているケースが目立ちます。

大学院修了後のキャリアと就職状況
修士課程修了者の進路
- 修士課程修了者:76,096人
- 無期雇用(正規・常勤など):56,276人(74.0%)
専攻別に見ると、無期雇用の割合は次のようになります。
- 工学:86.9%
- 農学:78.5%
- 理学:73.7%
- 保健:70.9%
- 社会科学:60.9%
- 人文科学:45.3%
特に理系修士は就職に強いことが数字からも読み取れます。
博士課程修了者の進路
- 博士課程修了者:15,673人
- 無期雇用:7,765人(49.5%)
- 有期雇用(任期付き・非常勤など):4,030人(25.7%)
博士課程修了者のうち、約半数はすぐには常勤・正規雇用に就いていません。非常勤講師や任期付き研究員(ポスドク)として、次のポストを目指しながら研究を続けるケースも多くなっています。
専門職大学院と資格取得(法科大学院など)
大学院の中でも、特に資格取得と直結しているのが専門職大学院です。
代表例:法科大学院(ロースクール)
- 弁護士・裁判官・検察官など、法曹を目指すための大学院
- 原則として、司法試験を受けるには法科大学院修了が必要(予備試験経由を除く)
- 2025年司法試験の法科大学院経由の最終合格率は34.3%
一方で、法科大学院に通わず、予備試験に合格するルートもあり、こちら経由の合格率は90.7%と非常に高い数字になっています(合格までの難易度は極めて高いと言われています)。
大学院の学費と奨学金
国立大学院の学費(標準額)
- 入学料:282,000円
- 授業料(年額):535,800円
- 初年度納付金合計:817,800円
この標準額は2004年から据え置かれており、2025年現在も変わっていません(一部大学では最大20%の範囲で値上げ可能)。
私立大学院の学費(初年度平均)
- 人文・社会科学系:およそ98万円
- 理・工・農学系:およそ114万円
- 保健系:およそ105万円
特に理系は、実験設備や機材費などの影響で、国公立より高額になるケースも多く見られます。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
大学院進学では、日本学生支援機構の奨学金を利用するケースが多くあります。
- 第一種奨学金(無利子)
- 修士課程:月額 5万円 or 8.8万円
- 博士課程:月額 8万円 or 12.2万円
- 第二種奨学金(有利子)
- 月額 5〜22万円の中から選択
大学(学部)の奨学金と違い、大学院では本人の収入が基準となるため、借りやすい側面もありますが、「返済が必要な借金」であることは忘れず、計画的に利用することが大切です。
女性研究者の現状
日本で研究者として働く女性は増え続けていますが、割合としてはまだ少ない状況です。
- 女性研究者数:約182,800人(2023年)
- 研究者全体に占める割合:18.5%
2014年と比べると、女性研究者は約5万人増えていますが、OECD諸国と比べると依然として低い水準です。
部門別に見ると、
- 農学部門:新規採用者のうち女性比率51.6%
- 保健部門:女性比率40.3%
- 工学部門:女性比率15.2%(依然として低い)
今後、理系分野・工学分野での女性研究者の活躍が期待されている一方で、制度整備や職場環境づくりなど、まだまだ課題も多い分野です。
まとめ:大学院進学は「専門性」と「キャリアの広がり」
大学院進学は、
- 専門知識・研究力の深化
- 資格取得(法科大学院・心理系・教職など)
- 特に理系における就職の強さ
につながる一方で、博士課程ではポスト不足やポスドク問題など、現実的な課題もあります。
文系・理系を問わず、
- 「なぜ大学院に行きたいのか」
- 「その後、どのような働き方・キャリアを目指すのか」
をセットで考えることがとても重要です。
東進館山校では、大学選びだけでなく、その先の大学院・就職・キャリアまで含めた進路相談も行っています。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

